住み慣れた自宅で療養生活を送る患者にとって、欠かせない存在と言っても過言ではない訪問看護師。病院に比べて患者に近い距離感での看護はメリットがある一方、患者やその家族に、言動や行動などがより注目されやすい環境にある。そのため些細な行動が不信感を抱かせて、クレームや来訪拒否といった事態に繋がってしまうケースがあるようだ。また基本的に単独での訪問が多く、トラブル発生時にすぐに他の人からフォローしてもらえないという負のループにも陥りやすい。
訪問看護サービスを利用している患者からのクレーム内容は、毎回必ず遅刻するなど言われて当然のものから、提供サービスの範囲を超えた要求をされるなどの理不尽なものまで様々である。訪問看護師が最も気をつける点として、自身の過失とは言えない理不尽なクレームを繰り返された際に、決して一人で対処しようとしてはいけないことが挙げられる。まずは所属の訪問看護ステーションなどに、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)を徹底して、話し合いを行う際は複数人で対応するのが望ましい。記憶の相違を避けるためにも、クレームや話し合いの内容などを正しく記録しておくことも重要だ。
理不尽な要求に対しては態度を一貫させ、安易に要求を呑むことも避けるべきである。クレーム事案に対してマニュアルを構築しておくなど、日頃から個人ではなく所属する組織全体での問題と捉えておくことは、訪問看護師が健全な環境・精神で看護サービスの提供に努めることにおいて、非常に重要なカギとなっている。